成蹊大学理工学部物質生命理工学科
Department of Material and Life Science, Seikei University
「火の誓い」、河井寛次郎著、講談社現代文庫 芸術関連で一人だけ好きな人物を挙げろと言われれば、少し迷って、河井寛次郎を挙げると思います(寛次郎自身は、芸術家や陶芸家と言われることを嫌い、人間国宝入りも断ったような人ですが)。寛次郎の出身地安来が松江のすぐ近くということは、島根大学に赴任してから知りました。安来にある足立美術館の工芸館には河井寛次郎の作品を常設展示する部屋もあります。 寛次郎は、東京工業大学の前身となる東京高等工業学校の窯業科で、焼き物に関連する科学技術を学び、焼き物の技術を科学的に研究もしたようですから、広い意味で研究者と言っても良いかもしれません。陶工としての仕事がもっとも代表的ですが、たくさんの著作も残していて、詩人的な側面もあります。本書はその代表的な一冊です。本書の前半は、焼き物やその関わりで出会った人たちに関する随筆ですが、ここでは、後半の詩の一部を紹介します。 機械は存在しない 機械は新しい肉体 美を追わない仕事 仕事の後から追ってくる美 ひとりの仕事でありながら ひとりの仕事でない仕事 どことなく研究にも通じる言葉のように感じられませんか。 2010年7月5日 |