成蹊大学理工学部物質生命理工学科
Department of Material and Life Science, Seikei University

本の紹介

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「無限の果てに何があるか」足立恒雄著、光文社(知恵の森文庫)


 高校生のころ、数学の存在意義が分からず悩んでいました。釈然としないものを抱えたまま、そこそこに勉強して、よくわからないまま大学に入り、はじめて数学の本質的な魅力に気がつきました。といっても、大学の授業が素晴らしくて分かったというわけではありません。この本に出会ったのです。

 数学は自然科学を記述するのに便利ですが、それだけが存在意義ではありませんでした。なぜ生きているのか、そんなことの答えが直接数式で導かれることはもちろんありませんが、数学の歴史は、まさに人間の歴史のようです。この本では、数学の「始まり」から、「終わり」までの流れを見通すことができます。もちろん数学はまだまだ発展する学問ですが、ある意味での「終わり」として、完全無欠に見えた数学が実は不完全であるということが数学的に証明されてしまった(ゲーデルの不完全性定理)という意味です。完璧で近づきにくく見えた数学に実は決定的な欠点があった、ということは、数学をかわいらいくて愛すべき存在に感じさせてくれます。

 数学の魅力を伝える良書は現在ではたくさん出ていますので、みなさんが見つけた本が面白ければ、それでいいのですが、もし数学の本質をもう少し知りたいけれど本が見つからないという人は、この本を読んでみてください。

 以前に紹介した小川洋子さんの「博士の愛した数式」の博士が最も愛した数式も紹介されています。(ちなみに、「無限の果てに何があるか」の方がだいぶ早く出版されています。)

2010年4月20日>