成蹊大学理工学部物質生命理工学科
Department of Material and Life Science, Seikei University
「世界は分けてもわからない」、福岡伸一著、講談社現代新書 前半部分では、緩やかに連結した独立の随筆が並べられているように思える本書が、後半になって、激しく動き出します。そして最後に、この本の結び「世界は分けないことにはわからない。しかし、世界は分けてもわからないのである。」にたどり着き、全ての伏線が繋がり、頭と心に入ってくる、という本です。 要素に分けて、その全ての要素を理解できれば全体が分かるのではないか、という要素還元論的な考え方だけでは全体は分からない、と私たちは思いはじめています。ではそもそも部分と全体の関係はどうなっているのか、そこを問いかけてくるのが本書です。私たちが部分と思っているものの本質を突き止める旅をする本ということもできるかもしれません。 理系の本としてはめずらしくベストセラー入りしたとして話題になった「生物と無生物のあいだ」の著者福岡伸一氏の2009年の著作です。小さな挿話から、科学哲学史の流れまで縦横無尽につないで、一つの物語を作り上げています。おもむきは異なりますが、ホフスタッターの「ゲーデル、エッシャー、バッハ」のような遊び心も感じられる本です。 2010年2月22日 |